日 本 旅 の ペ ン ク ラ ブ -----s i n c e 1962 ----  

伝統の文化を訪ねて①
球磨(くま)焼酎のふるさと 

>>>>中元 千恵子 >>   

▲仕込み甕の櫂(かい)入れ。目と耳で発酵の具合を見定めて撹拌し、微妙な温度管理を行う
急峻な山並みに囲まれた“隠れ里”
「トンネルが多かったでしょう?」
 熊本県人吉(ひとよし)市を訪ねると、行く先々でこう言われた。人吉を中心とする球磨地方は周囲をぐるりと九州山地に囲まれ、八代(やつしろ)市から向かうと、電車でも車でも20以上のトンネルを抜ける。江戸時代、「この先にもう人は住んでいない」と検地の役人を追い返したとか、山かげに多くの隠し田があったとか、地元に伝わる話も、さもありなんと思えてくる。“隠れ里”の風情だ。

 この地形も手伝ってか、球磨地方には独特の伝統文化が受け継がれている。例えばウンスンカルタ。16世紀にポルトガルから伝わった南蛮カルタから発展したカード遊びで、一時、日本中に広まった。江戸幕府が禁止令を出して衰退したが、なぜか人吉にだけは残った。本家のポルトガルでも消滅したそうだから、世界唯一、ここだけで受け継がれている文化かもしれない。

「あんまり山奥すぎて、幕府の禁止令もここまで届かんかったとでしょう」と地元の人は笑う。

食用米から作られる芳醇な焼酎
 球磨地方で、400年以上前から造られているのが球磨焼酎だ。日本酒が酒米を原料にするのに対し、球磨焼酎は食用の米を使う。なんともぜいたく。急峻な山並みから流れ出る豊富な水が肥沃な土地を育み、昔から米がよくとれたのだという。
 28ある蔵元のうち、今でも手作りを守る寿福酒造を訪ねた。
「球磨焼酎の特徴は、ふくよかな香りと甘み。しかも深いコクとキレのよさもある。本来の味を守ろうとしたら、自然と手作りの伝統製法を受け継ぐことになりました」。杜氏の方がそう話してくれる。

 焼酎は、まず麹(こうじ)を作って寝かせ、水や酵母、原料である米を加えて仕込む。仕込んでできた焼酎もろみを発酵させて蒸留する。

 麹作りや仕込みの温度管理での機械化が進むが、寿福酒造は全工程で手作りを貫いている。仕込みが始まる10月から翌5月までは泊まり込みで温度調節を行うそうだ。甕に入れたもろみがたてるプツプツという音をたよりに、夜中に何度も起きて撹拌し、発酵の具合を調節するのだという。

“ガラ”で味わえばさらにおいしく
 寿福酒造は、蒸留方法も昔から変えていない。少し前の焼酎ブーム以来、軽い飲み口に仕上がる減圧蒸留法を取り入れる蔵元が増えたが、寿福酒造は昔ながらの常圧蒸留法にこだわった。

 高温で蒸留するこの製法は、原料の風味が忠実に生きる半面、作り手の個性が出やすい。杜氏の腕の見せどころ、といったところだろう。焼酎作りはもともと常圧蒸留法のみだったという。

 球磨焼酎の豊かな味わいを楽しむには、昔から伝わる直燗(じきかん)という飲み方が一番だ。直燗は“ガラ”とよばれる容器に球磨焼酎を入れ、火鉢や囲炉裏に置かれた五徳(ごとく)にそのままのせて温める。

 水やお湯で薄めず、30度~55度ほどのぬる燗でダイレクトに味わう。本当においしい焼酎だけがこの飲み方に耐えられるのだと思った。

▲原料には地元の新米100%を使用している
▲蒸した米を冷ますのも重労働。蒸気でふやけた部分は手作業で丁寧に取り除く
▲球磨焼酎は何年か寝かせるとさらに味がまろやかになる
▲“九州の小京都”といわれる人吉の町並み
▲今も受け継がれるウンスンカルタ。色鮮やかな75枚のカードがある

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